ロック名曲セレクション


スザンヌ
  レナード・コーエン

なごみ
ダンス
ソウル

原題 Suzanne
リリース 1968年
作詞・作曲 レナード・コーエン
プロデュース ジョン・サイモン
演奏時間 3分47秒
収録アルバム 「レナード・コーエンの唄」(コロンビア/1968年)
ミュージシャン レナード・コーエン(ボーカル)他

 

[レビュー]

 60年代にボブ・ディランが端緒を開いた私小説的なメッセージ・ソングによるフォーク・ロックの創作スタイルは、その後、ジュディ・コリンズやジョニ・ミッチェルらのフォロワーに受け継がれ、さらに70年代初頭のジェイムス・テイラーとキャロル・キングの登場によって本格的なシンガー・ソングライターの時代の幕開けをもたらすことになる。

 レナード・コーエンは、ディランキャロル・キングらをつなぐ60年代の後半に登場し、端正なサウンドと独特の語り口を思わせる個性的なボーカル・スタイルで異彩 を放ったフォーク系のシンガー・ソングライターである。

 1934年、カナダに住むユダヤ人の中流家庭に生まれたレナード・コーエンは、少年時代からギターに親しむなど音楽に手を染めてはいたものの、学生時代に英文学を専攻し、1956年に最初の詩集を出版して高い評価を得る。また、1963年発表の"The Favorite Games" と1966年発表の "Beautiful Losers" の二つの小説がいずれも当時の傑作と認められるなど、レナードは詩人あるいは小説家としての名声を高めていく。

 レナード・コーエンがミュージシャンとしてのキャリアをスタートさせるきっかけになったものは、女性フォーク・シンガーのジュディ・コリンズが発表したレナードの自作曲「スザンヌ」である。

 1966年リリースのジュディ・コリンズのアルバム「イン・マイ・ライフ」(ビートルズ同名曲のカバーを含む)からシングル・カットされた「スザンヌ」は当時のラジオ局が競って取り上げるほどのスマッシュ・ヒットとなり、ジュディ・コリンズから音楽家への転身を強く奨められたレナードは、コロンビアから自身のデビュー・アルバム「レナード・コーエンの唄」(1968年)を発表してミュージシャンとしてのデビューを飾る。

 本ナンバー「スザンヌ」は、デビュー・アルバム「レナード・コーエンの唄」のオープニングを飾る曲目だが、また、ジュディ・コリンズがヒットさせていた同名曲の作者自身によるセルフ・カバー・バージョンでもある。加えて、本ナンバー「スザンヌ」は、すでにデビュー時に完成されていたレナード・コーエンのシンガー及びソングライターとしての特徴を色濃く伝える彼の代表作と言うことができるだろう。

 曲は、静かにリズムを刻むアコースティック・ギターの伴奏とともに抑揚を押さえて語りかけるかのようなレナード特有のボーカル・ラインによってスタートする。高低の動きを控えたシンプルなフレーズがほぼ同じリズムと音型によって繰り返されるなかで旋律は進むが、あたかも静かに打ち寄せるさざ波が次第にその波音を高めていくかのごとく曲が進むにつれて聴き手の感情と感動が高められる。

 各フレーズの後半に登場するクライマックスのパート(リード・ボーカルによる旋律の最高音部)では、純粋で無垢な歌声を思わせるバック・コーラスとストリングスの重奏が追加されてサウンドそのものが重厚感を増すが、同時に、曲全体の厳かで肅然とした雰囲気までがその度合いをさらに増しているかのような印象を受ける。「スザンヌ」は、作曲、アレンジ、ボーカルのいずれの側面 を取り上げても、その後のレナード・コーエンの独特の作風を予告した彼の処女作であり、また、代表作でもあると言えるだろう。

 

[モア・インフォメーション]

 アルバム「レナード・コーエンの唄」は、ザ・バンドを筆頭にウッドストック周辺のミュージシャン達から絶大な信頼を寄せられていたジョン・サイモンがアルバム・プロデュースを担当している。レナード・コーエンとジョン・サイモンのいずれがアルバム制作における主導権をより多く握っていたかは定かではないが、「レナード・コーエンの唄」は、レナードのシンガー・ソングライターとしての創作スタイルをほぼ完成させるデビュー・アルバムになったと言ってよいだろう。

 本ナンバー「スザンヌ」のほかにも多くの話題曲を揃える「レナード・コーエンの唄」だが、なかでも注目すべきは別 れていく妻への投げかけの言葉を綴った「さよならマリアンヌ」である。レナードにしては異例と思えるほどの高い音程で旋律をシャウトする「さよならマリアンヌ」からは、辛い思いを乗り越えようとの毅然とした決意を語る歌詞とはうらはらに、癒しようもないほどに傷ついた歌い手の本心が滲み出ているような気がしてならない。

 レナード・コーエンは、その後も「ひとり、部屋に歌う」(原題は "Songs From A Room"/1969年)や「愛と憎しみの唄」(原題は "Songs Of Love And Hate/1971年)などのアルバムを発表して、「レナード・コーエンの唄」で創り上げられた独自の歌世界を発展させていく。

 特に、セカンド・アルバムの「ひとり、部屋に歌う」に収録された「電線の鳥」("Bird On The Wire")は、ジュディ・コリンズ、ティム・ハーディン、ジョー・コッカーらの多くのミュージシャンによってカバーされた名曲として知られ、レナード・コーエン作品の中でも「スザンヌ」に匹敵する傑作ナンバーとして高い人気を誇っている。

 ・関連ページ レナード・コーエンのリンク集

 ・関連ページ ボブ・ディランの関連アーティスト・リンク集(ジュディ・コリンズのオフィシャル・サイトを含みます)

 

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