ロック名曲セレクション


あなただけを
  ジェファーソン・エアプレイン

なごみ
ダンス
ソウル

原題 Somebody To Love
リリース 1967年
作詞・作曲 ダービー・スリック
プロデュース リック・ジャラード
演奏時間 2分59秒
収録アルバム 「シュールリアリスティック・ピロー」(RCA/1967年)
ミュージシャン グレース・スリック(ボーカル)、マーティ・ベイリン(ギター、ボーカル)、ポール・カントナー(ギター、ボーカル)、ヨーマ・コーコネン(ギター)、ジャック・キャサディ(ベース)、スペンサー・ドライデン(パーカッション)

 

[レビュー]

 1960年代の半ば過ぎに米国のサンフランシスコを中心に沸き起こったサイケデリック・ロックのムーブメントは、ヒッピー文化、あるいは、カウンター・カルチャーと呼ばれる社会現象と結びつき、また、これを音楽やファッションの側面 から主導することでその存在感を強めていく。

 サイケデリック・ロックの中心にいたグループはジェファーソン・エアプレイン、グレイトフル・デッド、クイックシルバー・メッセンジャー・サービスなどだが、なかでも1966年にメジャー・レーベルのRCAからデビュー・アルバム「テイクス・オフ」を発表し、また、翌年の1967年に「あなただけを」と「ホワイト・ラビット」の2曲がベスト10入りするシングル・ヒットとなったジェファーソン・エアプレインは、当時のサンフランシスコのロック・シーンを代表するロック・バンドとして高い人気を誇った。

 ジェファーソン・エアプレインは、1965年にリーダー格のマーティ・ベイリンを中心にサンフランシスコで結成される。デビュー・アルバムの発表後にドラマーのスキップ・スペンスと女性シンガーのシグニ・アンダーソンがグループを脱退するが、代わってスペンサー・ドライデン(ドラムス)とグレース・スリック(ボーカル)が新たに加入することで、セカンド・アルバム「シュールリアリスティック・ピロー」以降のライン・ナップが顔を揃えることとなる。

 本ナンバー「あなただけを」は、セカンド・アルバム「シュールリアリスティック・ピロー」からのシングル・カット・ナンバーだが、当時のジェファーソン・エアプレインを代表するヒット曲であるとともに、全米の音楽ファンにサンフランシスコ・ロックの存在とその魅力を知らしめることとなった記念碑的なナンバーである。

 曲は、イントロがなく、グレース・スリックの力強いリード・ボーカルとこれをバック・アップするギターとドラムスのリズム・トラックによって華やかに幕を開ける。音楽上の構成としては、並行して流れるスリックのリード・ボーカルとジャック・キャサディのベース・ラインが曲の骨格を成し、これにリズム・セクションと男性ボーカルのコーラス・パートを加えて完成されるかなりシンプルなものと言える。その一方で、オリエンタルなムードを醸し出す独特の旋律の流れや曲のエンディングを彩 るコーコネンのイマジネイティブなギター・ソロからは、当時のロック・シーンを主導していたサイケデリック・ムーブメントの一端を感じ取ることができる。

 「あなただけを」の最大の魅力は、この曲のリード・ボーカルを務めたグレース・スリックという女性シンガーによってもたらされているとは言えないだろうか。グレース・スリックは、力強いロック・ビートに乗せてアップテンポで展開されるこの曲の中で、独自のソウルを感じさせるパワフルなシャウトから、繊細なヴィブラートを駆使して細やかに表現されるパートまでを見事に歌い切る。実力的にはジャニス・ジョプリンにも劣らないと感じられるグレース・スリックは、日本のロック・ファンにもっと高く評価されてもおかしくない女性ロック・シンガーの一人と言えるだろう。

 

[モア・インフォメーション]

 アルバム「シュールリアリスティック・ピロー」からは「あなただけを」に続いて「ホワイト・ラビット」がシングル・カットされ、この曲もチャートの上位 に躍進するヒット・ナンバーとなった。 グレース・スリックの作詞・作曲による「ホワイト・ラビット」は、フラメンコ風のリズム・トラックにラーガ・ロックの影響をうかがわせる特異な旋律と抽象的で理解困難な歌詞を組み合わせることにより、当時のサイケデリック・ロック・ブームを象徴する楽曲の一つとなった。

 (「ホワイト・ラビット」は、バンド・メンバーのドラッグ体験を音楽化したものだと伝えられる。ちなみに、ジェファーソン・エアプレインというグループ名もマリファナ・スティックを意味するドラッグ用語から取られたとする説がある)

 その後のジェファーソン・エアプレインは、このグループの「サージェント・ペパーズ」とも呼ばれる組曲形式の「アフター・ベイジング・アット・バクスターズ」(1967年)や、グレイトフル・デッドのジェリー・ガルシア、バッファロー・スプリングフィールドのスティーブン・スティルスらを迎えて強いメッセージ性を打ち出した「ヴォランティアーズ」(1969年)などのアルバムを発表して引き続き高い評価を受ける。

 しかしながら、70年代に入ってメンバーの交代が相次いだジェファーソン・エアプレインは、1975年のアルバム「ドラゴン・フライ」の発表を機にジャファーソン・スターシップへとグループ名を変更する。さらに、1985年にはスターシップへ名称を変えて活動を続けるが、スターシップへの改称後はエレクトロニック・ポップを取り入れたサウンドが主体となり、かつてのジェファーソン・エアプレインとは全く別 のグループになったと言ってよいであろう。

 なお、ジェファーソン・エアプレインは、1996年にロックの殿堂入り(The Rock and Roll Hall of Fame)を果たしている。

 ・関連ページ ジェファーソン・エアプレインのリンク集

 ・関連ページ ジェファーソン・エアプレインのメンバー別 リンク集

 

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