ビートルズ特集


Beatles For Sale (1964)

1. No Reply (Lennon & McCartney)
2. I'm Loser (Lennon & McCartney)
3. Baby's In Black (Lennon & McCartney)
4. Rock And Roll Music (Chuck Berry)
5. I'll Follow The Sun (Lennon & McCartney)
6. Mr. Moonlight (Roy Lee Johnson)
7. Kansas City/Hey, Hey, Hey, Hey
(Jerry Lieber & Mike Stoller, Richard Penniman)
8. Eight Days A Week (Lennon & McCartney)
9. Words Of Love (Buddy Holly)
10. Honey Don't (Carl Perkins)
11. Every Little Thing (Lennon & McCartney)
12. I Don't Want Spoil The Party (Lennon & McCartney)
13. What You're Doing (Lennon & McCartney)
14. Everybody's Trying To Be My Baby (Carl Perkins)
Produced by George Martin

 


[アルバム概論]

 奇妙な二面性に彩られたアルバムである。

 オープニングを飾る "No Reply" を聴くだけで、このアルバムが、若さゆえのエネルギーをおもむくままに発散させて個性的なロックンロールを展開してきた前作までの作品とは異質のものであることがわかる。詳しくは個別 の楽曲紹介の中で触れていくつもりだが、"Beatles For Sale" に収録されたオリジナル作品の多くからは、ソングライターとしてのビートルズが、自らの内面 に目を向け、内省的な曲作りを意識し始めたことによって、アーティストとしてのさらなる成熟へ向かい始める様子が感じられる。

 一方で、このアルバムに収められた全14曲のうち、6曲までを占めるカバー・ソングにおいては、一切の小細工を排した真っ向勝負のようなロックンロールを堪能することができる。深みを増していくオリジナル曲と比較されることで、その胸のすくような痛快さがいっそう強調されているかのようである。

 オリジナル曲とカバー曲との対比によって浮かび上がる本作の二面 性は、このアルバムが収録された当時のビートルズが置かれていた状況を無視しては捉えられない。1964年7月に前作 "A Hard Day's Night" を発表したビートルズは、同年8月から9月にかけて初のアメリカ・ツアーを敢行し、帰国後まもなくの10月からは、およそ2ヶ月に及ぶイギリスでの国内ツアーをスタートさせている。

 これらの過密スケジュールの合間を縫うように本作のレコーディングが進められたわけだが、同年のクリスマスに間に合わせるべくリリースされた "Beatles For Sale" には、十分なオリジナル曲のストックが用意されていたとは言い難く、アルバムのスペースを埋めるためにはステージ上で何度も披露されてきたお得意のカバー・ソングをあてがうほかなかったのであろう。

 しかしながら、これらの事情が本作の価値を低めるものでないことは言うまでもない。オリジナル曲は、過密スケジュールの合間に制作されたとは思えない充実ぶりを感じさせ、ソング・ライティングの姿勢が内省化していくのみならず、個々のコンセプトがより明確となった各ナンバーが示す楽曲ごとの構築力からは、ビートルズの作曲技法が一層の進化を遂げていく様子が十分に感じ取れる。

 また、チャック・ベリー ("Rock And Roll Music")、カール・パーキンス ("Honey Don't", "Everybody's Trying To Be My Baby")、バディ・ホリー ("Words Of Love") ら、メンバーのフェイバリット・シンガーによる作品を中心に選曲されたカバー・バージョンは、ビートルズの公式アルバムの中でも屈指のカバー曲集と言えるだろう。

 やや焦点がぼやけているかのような印象を与えがちな本作であるが、オリジナル、カバー曲のいずれにおいても、当時のビートルズをありのままに伝える作品群であることは否定できない。むしろ、一見して二律背反と感じられるほどにタイプの異なる二つの作品群を、一つのパッケージに封じ込めて世に送り出すという離れ業を可能にしたのは、当時の状況下に置かれたがゆえに彼らが発揮し得た創作エネルギーであったとも考えられるのである。

 

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[アルバム紹介のインデックス] [Beatles For Sale 楽曲紹介]

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