ロック名曲セレクション


ムーンダンス
  ヴァン・モリソン

なごみ
ダンス
ソウル

原題 Moondance
リリース 1970年
作詞・作曲 ヴァン・モリソン
プロデュース ヴァン・モリソン
演奏時間 4分35秒
収録アルバム 「ムーンダンス」(ワーナー/1970年)
ミュージシャン ヴァン・モリソン(ボーカル、ギター)、ジャック・シュローラー(サックス)、コリン・ティルトン (フルート)、ジェフ・レイベス(ピアノ)、ジョン・プラタニア(ギター)、ジョン・クリンバーグ(ベース)、ギャリー・マレイバー(ドラムス)

 

[レビュー]

 孤高のソウル・シンガーとも呼ばれるヴァン・モリソンは、1945年、北アイルランドのベルファーストに生まれた。音楽好きだった父親の影響もあり、幼少の頃からジミー・ロジャース、ウディ・ガスリーらのブルースやカントリーを聴いて育ったヴァン・モリソンは、10代の終わりにブルース・ロック・バンドのゼムを結成。1964年にデッカとの契約にこぎつけ、2枚のアルバム(「ゼム」と「ゼム・アゲイン」)をリリースする。

 「ヒア・カムズ・ザ・ナイト」、「グロリア」、「ミスティック・アイズ」などのヒット・シングルが生まれたゼム時代だが、レコード会社によるイメージ先行型のプロデュースを嫌ったモリソンは、1966年にグループの脱退を決意。渡米してワーナーと契約したヴァン・モリソンは、1968年にアルバム「アストラル・ウィークス」を発表する。

 コニー・ケイ(ドラムス)、リチャード・デイビス(ベース)らの一流のジャズ・メンを迎えてレコーディングされた「アストラル・ウィークス」は、インプロビゼーションの手法を生かしたジャズのフィーリングにモリソンのソウルフルなボーカルを巧みにフィットさせることで、モリソンの新しい音楽キャリアの出発点になるとともに、60年代を代表するロック・アルバムの一つとして高い評価を受けることとなった。そして、「アストラル・ウィークス」に続くワーナーからのモリソンの第2弾アルバムとして、1970年に「ムーンダンス」がリリースされる。

 アルバムのタイトル・ナンバーでもある「ムーンダンス」は、サックスとフルートの響きに軽くスイングするようなリズム・セクションを組み合わせることで、かなりジャジーなムードのナンバーに仕上がっている。また、この曲は、70年代のヴァン・モリソン作品の方向性を決定づけることにより、当時のモリソンを代表するナンバーの一つとして高く評価されることとなった。

 モリソンのボーカルは、ライトなタッチでリズム・セクションの上にメロディ・ラインを乗せて進みながらも、展開部に至ると一転してダイナミックなドライヴ感にあふれる熱唱を聴かせる。主題部分の2コーラス目では、モリソンのボーカルにフルートがハーモニーを重ねて二重唱となるが、このパートの美しさは絶品と言うほかなく、この曲のハイライトの一つであるとともに、ジャズ的な手法をロック・ボーカルに組み合わせることで自らの新たな表現手段を探り当てようとしていた当時のヴァン・モリソンにとって最も大きな実りを感じさせる部分でもあったに違いない。

 ピアノとベース・ラインの二重奏の上にサックスが即興的に主題を奏でる間奏パートも含め、ジャズのフィーリングを気負いなく取り入れることで「ムーンダンス」が示したロック・ミュージックの新しいスタイルは、80年代以降のスティングなど、その後に登場する多くのロック・ミュージシャンに少なからぬ 影響を与えることとなった。

 

[モア・インフォメーション]

 本ナンバー「ムーンダンス」のカバー・ソングとしては、ジョージ・フェイムがアルバム「クール・キャット・ブルース」(1991年)の中で発表したバージョンに触れておきたい。特筆すべきことに、このカバー・バージョンにはヴァン・モリソン本人がバック・コーラスで参加している。しかも、オリジナル・バージョンでフルートがリード・ボーカルに重ねていたハーモニーのパートを、ヴァン・モリソンがボーカルで再現することによりジョージ・フェイムとの二重唱を演出するのであり、ファンにとっては文字どおり必聴もののカバーと言ってよいであろう。

 (ご参考ながら、ジョージ・フェイムは90年代のヴァン・モリソンのツアーにキーボード奏者として同行している)

 アルバム「ムーンダンス」は、タイトル・ナンバーのほか、ザ・バンドの解散コンサート「ラスト・ワルツ」でヴァン・モリソンが歌い、同コンサートのハイライトとして知られることになった「キャラバン」や、ヴァン・モリソン作品の中でも屈指のラヴ・バラッドとして名高い「クレイジー・ラヴ」、また、「アストラル・ウィークス」で創造された世界を最も多く受け継ぐ「ブランニューデイ」など、人気、クオリティともに申し分のないナンバーを多く含むことで、この時期のヴァン・モリソンを象徴するアルバムの一つとなった。

 なお、「ムーンダンス」以降のヴァン・モリソンの代表的なアルバムとしては、「テュペロ・ハニー」(1971年)、「ヴィードン・フリース」(1974年)、「ア・センス・オブ・ワンダー」(1984年)、「アヴァロン・サンセット」(1989年) などがある。

 ・関連ページ ヴァン・モリソンのリンク集

 

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