ロック名曲セレクション


ラヴ・ハズ・ノー・プライド
  ボニー・レイット

なごみ
ダンス
ソウル

原題 Love Has No Pride
リリース 1972年
作詞・作曲 エリック・カズ、リビー・タイタス
プロデュース

マイケル・カスクーナ

演奏時間 3分43秒
収録アルバム 「ギヴ・イット・アップ」(ワーナー/1972年)
ミュージシャン ボニー・レイット(ボーカル、ギター、ピアノ)、フリーボ(ベース)

 

[レビュー]

 70年代以降のブルース・ロック界を彩った歌姫であり、また、優れた女性ブルース・ギタリストとしても活躍を続けるボニー・レイットは、1949年生まれ、米国カリフォルニア州、バーバンクの出身。

 「パジャマ・ゲーム」、「オクラホマ」などに出演したプロードウェイ・スター、ジョン・レイットの娘として生まれたボニー・レイットは、幼少のころからエンターテインメント業界に親しみ、10代の初めからギターを弾き始める。やがてボニーの音楽上の興味は、当時のブームとなっていたフォーク系のロックよりも黒人のブルースへと向かい、彼女はフレッド・マクダウェル、サン・ハウス、シッピー・ウォレスらの黒人ブルース・ミュージシャンの影響を強く受けることとなる。

 ボニー・レイットのレコード・デビューは、彼女の生まれ故郷、バーバンクに本社を構えるワーナー・ブラザースからリリースされたアルバム「ボニー・レイット」(1971年)によって実現する。ジュニア・ウェルズ(ハープ)、A.C.リード(ジミー・リードの弟でサックス奏者)らの黒人ブルース・プレイヤーを招いてレコーディングされたボニーのデビュー・アルバムは、確かな演奏テクニックに裏打ちされたクオリティの高いパフォーマンスの中に、ボニー・レイットの若々しい感性が息づく印象深い作品となった。

 ボニー・レイットは、さらに1972年に発表したセカンド・アルバム「ギヴ・イット・アップ」において、デビュー時の路線を継承しながらもその作品と表現力のバリエーションを一段と広げ、アーティストとしての急速な成長の跡を見せる。(「ギヴ・イット・アップ」は、ボニー・レイットにとって初めての全米ヒット・チャート入りを果 たしたアルバムとなった)

 「ギヴ・イット・アップ」の収録曲のなかでも、とりわけデビュー当初のボニー・レイットの最大のヒット曲として70年代初頭のアメリカン・ロック・シーンを飾った彼女の代表曲が、本ナンバー「ラヴ・ハズ・ノー・プライド」である。

 「ラヴ・ハズ・ノー・プライド」は、イントロがなくスタートするボニーのボーカルとこれをバックアップするギター、ピアノ、ベースの伴奏によってその幕が開ける。シンプルな楽器の構成と不要な複雑さを排したかのように全編を同じトーンで貫くアレンジからは当時のウエストコーストを吹き荒れていたフォーク・ロック・ブームの影響が垣間見えるが、フリーボのベース・ラインが生み出すうねるようなリズムの深さと、派手さを感じさせないもののメリハリを効かせたシャープな歌声を響かせるボニーのボーカル・パートからは、彼女が慕い続け、そして影響を受け続けたブルースの匂いを強く感じ取ることができる。

 なお、旋律、アレンジ、音色のいずれを取っても驚くほどにシンプルでありながら、聴き手をまったく飽きさせないこの曲の魅力の源泉は、作者の心情を汲み取り、飾り気のない素直な歌声で曲中のドラマをピュアに歌い上げるボニー・レイットのボーカリストとしての表現力であろう。特に、別 れゆく相手への一途な想いを何のてらいもなくさらけ出すミドル・パートでのボニーのシャウトは、強弱の変化からファルセットを駆使するダイナミックな音域の広がりまで、この曲の最大のハイライトと言えるほどに素晴らしい。

 若さゆえの鋭さと力強さを感じさせるボニーの歌声、そしてアコースティックでストレートなサウンド編成など、いずれの側面 からも、本ナンバー「ラヴ・ハズ・ノー・プライド」は、青春時代の1ページを切り取って鮮やかに活写 したかのような瑞々しい魅力にあふれるロックの名曲と言えるだろう。

 

[モア・インフォメーション]

 「ラヴ・ハズ・ノー・プライド」の共作者の一人であるエリック・カズは、1947年、ニューヨーク、ブルックリンの生まれ。60年代半ばからハッピー&アーティ・トラウムらとともにチルドレン・オブ・パラダイスの一員として活動し、その後はポップ・ロック・バンドのブルース・マグースで活躍した。また、70年代前半に「イフ・ユア・ロンリー」(1972年)と「カル・デ・サック」(1974年)の2枚のソロ・アルバムをアトランティック・レーベルに残している。

 心の琴線に触れるような温もりと美しさに定評のあるエリック・カズの作品は、松任谷由美など多くのポップス系の日本人ソングライターの作品に影響を与えているものと思われる。エリック・カズは、本国のアメリカよりもむしろ日本のロック・ファンの間でカリスマ的な人気を集めるシンガー・ソングライターと言えるのではないだろうか。

 一方、「ギヴ・イット・アップ」の発表後もコンスタントにヒット・アルバムをリリースしていくボニー・レイットだが、彼女の代表的なアルバムとしては、70年代の「スイート・フォーギヴネス」(1977年 / "Sweet Forgiveness")と80年代の「ニック・オブ・タイム」(1989年 / "Nick Of Time")の2枚を挙げておきたい。

 ゴールドディスクを獲得した「スイート・フォーギヴネス」は、ドアーズジャニス・ジョプリンのアルバム・プロデュースで知られるポール・A・ロスチャイルドがプロデューサーを務め、マイケル・マクドナルドやJ.D.サウザー、リトル・フィートのフレッド・タケットなど豪華ゲストが参加した話題作である。また、元バーズのデヴィッド・クロスビーとジャズ・ピアニストのハービー・ハンコックが参加した「ニック・オブ・タイム」は、1989年のグラミー賞アルバム部門で受賞したほか、ボニー・レイットにとって初めての全米トップ・チャートを獲得したヒット・アルバムとなった。

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