ビートルズ特集


Live At The BBC

[ソング・リスト]

 

 1962年から1965年までの3年間に、ビートルズがBBCラジオ出演の際に残したライブ演奏曲目の中から、56曲を選んでパッケージした2枚組のCDボックス。1994年にリリースされ、イギリスではチャートへの登場と同時に第1位 を獲得する大ヒットアルバムとなった。

 ビートルズがBBCに残した全92曲の中から56曲を厳選したのは、5人目のビートルと言われたジョージ・マーティンである。その内訳は、公式アルバムの中ですでに発表されているカバー曲及びオリジナル曲のライブ演奏と、これまではリリースされる機会のなかったカバー曲及び2曲のオリジナル曲 ("From Us To You""I'll Be On My Way") のライブ演奏に大別される。

 すでに発表されているオリジナル曲については、本作を聴くことで、スタジオ録音によるバージョンと一発録りのライブ演奏におけるビートルズのプレイスタイルの違いを知ることができる。また、チャック・ベリーリトル・リチャードカール・パーキンスらを中心とするカバー曲の選曲から、ビートルズの音楽的ルーツを改めて確認できることも本作の魅力の一つである。

 個別の収録曲の中では、本作で初めて披露された唯一のオリジナル・ナンバーと言える "I'll Be On My Way" を取り上げておきたい (本作で初めて公開されたオリジナル曲としては、前記のとおり "From Us To You" もあるのだが、こちらはすでにリリース済みの "From Me To You" に基づく改作バージョンである)。

 ジョンのリズムギターが主導するイントロのコード展開を聴いただけでビートルズ・ナンバーと確信させられる "I'll Be On My Way" は、ポール・マッカートニーが16歳ころまでに書き上げた曲と言われる。ジョンとポールが曲の大半をユニゾンのリードボーカルで歌い通 すのだが、もしもスタジオ・レコーディングによってこの曲が残されていたならば、(単純なユニゾンではなく) さらなるアイディアが注ぎ込まれていたのではないかと少し残念に感じられる素材である。

 曲全体の印象は、ジョージ・ハリスンのボーカルによって本作にも収録されたバディ・ホリー"Crying, Waiting, Hoping" に似ている (旋律の展開やフレーズの締め括りなど)。バディ・ホリーの曲は1959年に発表されたもので、この時のポールは16歳から17歳のはずであり、楽曲の版権を買い求めるほど尊敬してやまないと言われるバディ・ホリーの新曲に影響されて、ポールがこのナンバーを作曲した可能性も否定できないと思われる。

 (なお、"I'll Be On My Way" は、レノン&マッカートニーのクレジットのもとに、1963年にビリー・J・クレーマー&ザ・ダコタスによってリリースされている。ザ・ダコタスを含むビートルズ関連アーティストのリンク集はこちらからどうぞ)

 カバー曲の中では、フィル・スペクターの "To Know Her Is To Love Her" におけるジョン・レノンのボーカルが素晴らしい。ハードなロックンロールを歌う時とは別 人のような優しさに満ちた歌声だが、クライマックスの展開部を経て、再びロマンティックな主題部分へ還る時の表情の変化がもたらすドラマティックな展開は、何度聴いても鳥肌が立つほどにスリリングである。

 ジョンは、1975年リリースのアルバム「ロックンロール」のセッションでもこの曲を取り上げているが、この時のテイクを聴くと (「ロックンロール」には収録されていないが、1986年リリースの「メンローブ・アベニュー」の中で発表された)、本作収録のナンバーと同一曲とは思えないほどのディープでハードな歌声を聴かせている。二つのレコーディングの間に流れた年月と、その間に生じたジョンをとりまく環境の変化に思いをめぐらすことは、リスナーとして感傷的すぎるのだろうか。

 

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